熱中症のメカニズムと正しい対策
- 院長 大澤慎吾

- 6月17日
- 読了時間: 5分
暑さに負けない体をつくるために
🥵熱中症とは?
熱中症とは、「体の中に熱がたまりすぎて、体がうまく冷やせなくなることで起こる体調不良」です。
イメージで言うと…
車のエンジンが熱くなりすぎて止まってしまう「オーバーヒート」と同じようなもの。人の体も、体温をうまく下げられないと、頭がぼーっとしたり、意識を失ってしまうこともあります。
熱中症になるメカニズム(仕組み)

私たちの体は、暑くなると
汗をかいて熱を外に出す
血管を広げて熱を逃がす
といった仕組みで体温を調整しています。
ですが、以下のような条件が重なると、この調整機能がうまく働かず、体に熱がこもってしまいます。
熱中症になりやすい環境
気温が高い(30℃以上)
湿度が高い(70%以上)
無風状態や直射日光の下
急に暑くなった日(体が慣れていない)
アスファルトなど照り返しが強い場所

熱中症になりやすい人
✅ 特に注意が必要な人
高齢者(暑さを感じにくく、汗をかきにくい)
子ども(体温調節機能が未発達)
持病がある人(高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病など)
睡眠不足・疲れがたまっている人
暑さに慣れていない人(急に暑くなった日など)
🔍 なぜ持病や疲労があると危険?
▶ 持病のある人 は…
心臓や血管の働きが弱く、熱を外に逃がしにくい
汗が出にくく、体温がこもりやすい
喉の渇きを感じにくく、脱水に気づきにくい
● 高血圧・心臓病
→ 心臓の機能が落ちていると、体にこもった熱をうまく外に出せない→ 血管の調節がうまくいかず、熱がこもってしまう
● 糖尿病
→ 自律神経の働きが弱くなっていることが多く、汗が出にくくなり体温調節が苦手→ さらに、脱水しても喉の渇きを感じにくい場合があり、重症化しやすい
● 腎臓病
→ 水分や塩分のバランスを保ちにくく、少しの脱水でも体調を崩しやすい
● 精神疾患・認知症
→ 暑さや体調の変化に気づきにくい→ 水分補給を忘れたり、うまくできなかったりする
▶ 睡眠不足や疲労がある人は…
自律神経のバランスが崩れて体温調節がうまくいかない
血流も悪くなり、体内に熱がこもりやすい
体の反応が鈍くなり、気づかないうちに重症化することも
● 自律神経の働きが弱くなる
→ 疲れや寝不足で自律神経のバランスが乱れると、体温調節(汗や血流の調整)機能が低下します→ 暑くても汗が出にくくなったり、体温が下がりにくくなる
● 体内の「水のめぐり」も悪くなる
→ 疲労がたまると血流も悪くなり、体に熱がこもりやすくなる
● 免疫や内臓の働きも落ちている
→ 体全体の反応が鈍くなり、熱中症の初期サインに気づきにくく、重症化しやすい
熱中症の症状
初期症状を見逃さないことが大切です。
🌡️ 軽度
めまい・立ちくらみ
顔が赤い
筋肉がつる(こむら返り)
少し頭が痛い・ボーっとする
🌡️中等度〜重度
頭痛・吐き気
意識がもうろうとする
汗が出なくなる(重症のサイン)
まっすぐ歩けない・反応がにぶい
💡熱中症の予防法
✅ 1. こまめな水分補給
のどが渇く前に少しずつ飲む
「水」「麦茶」「経口補水液」などが基本
塩分も同時に補う(スポーツドリンクや塩飴など)

⚠ 注意:ペットボトル症候群にご用心
糖分の多い清涼飲料(炭酸・ジュース・スポーツドリンク)を大量に飲みすぎると、血糖値が異常に上がり「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」になることがあります。
これは、糖分を大量に急激に摂取したことによる一過性の糖尿症状です。
頭がボーっとする、喉が異常に渇く、だるさが抜けない…などの症状がある場合は注意が必要です。
※スポーツドリンク500㎖に約25~30gの糖分が含まれています(成人の一日の糖質の摂取目安は250~300g)
⚠ 注意:カフェイン飲料では水分補給にならない
コーヒー・緑茶・紅茶・エナジードリンクなどはカフェインが含まれており、利尿作用でかえって水分を失ってしまうこともあります。
✅ 2. 涼しい環境をつくる
エアコン・扇風機を上手に使う
日差しを避け、帽子や日傘を活用
車内や室内でも油断しない(熱中症は室内でも多い!)

✅ 3. 環境への「順化」が大切!
私たちの体は、少しずつ暑さに慣れていくことで熱中症に強くなっていきます。これを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。
🔷 順化のためにおすすめなのは…
外を歩く、軽く運動する
日中に少し汗をかく習慣をつける
登山やキャンプなど、自然の中で過ごすのも効果的
エアコンの効いた室内ばかりで過ごしていると、体が暑さに慣れず、かえって熱中症になりやすくなります。快適すぎる環境が、逆に体を弱くしてしまうこともあるのです。
熱中症になってしまったら…(対処法)
1. 涼しい場所に避難
日陰、冷房のある室内へ。衣服をゆるめて体を冷やします。

2. 体を冷やす
保冷剤や冷たいタオルで「首・わきの下・足の付け根」を冷やす
うちわや扇風機で風を送る

3. 水分と塩分を補給
意識がはっきりしていれば、経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ飲ませます。
⚠ このような場合は救急要請!
意識がない
自力で水分を取れない
水分をとっても、体調が回復しない
※このような場合は、すぐに医療機関を受診してください。
院長よりひとこと
最近の日本の夏は、昔とは違う「命の危険がある暑さ」です。熱中症は誰にでも起こりえますが、正しく備えることで防ぐことができます。
日々の暮らしの中で、体を暑さに慣らしながら、上手に水分を補給し、無理のない範囲で夏を乗り切っていきましょう。














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