マラソントレーニング
- 院長 大澤慎吾

- 3月28日
- 読了時間: 9分
更新日:3月29日
ダニエルズ式トレーニング理論
1.マラソントレーニング計画の重要性
ケガを予防し、効率的に走力を伸ばすには計画的なトレーニングが不可欠。
その指標として活用できるのが「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」。

普段の運動でランニングをしている方の目的は何でしょうか?
私の場合、最初は運動不足解消、健康のため30分くらいジョギングをしていました。
続けているうちに、だんだんと早く、長く走れるようになり、自分自身の成長が楽しく感じ、もっと速く走れるようになりたいと思うようになり、マラソン大会に参加するようになりました。
健康のために走っている方はあまりトレーニング計画は重要ではないかもしれません。
初めは歩いたりしながら無理をせず、30分くらい走れるようになってください。
それを週2~3回出来れば、健康維持にはちょうどいいと思います。
しかし、マラソン大会に参加する方、もっと早くなりたいと思っている方はトレーニングを計画的に行うことが重要になります。
ただ闇雲に走る距離を増やしたり、きついトレーニングを行えばいいわけではありません。
無計画なトレーニングだと続けられなかったり、ケガや障害につながります。
自身の走力や目標タイムに合わせて、計画的に練習できれば、ケガを予防して、効率的に走力を伸ばすことができます。
その指標になるのが
「ダニエルズのランニングフォーミュラ」です。
今回は市民ランナーがマラソンのタイムを向上させるためのダニエルズ式のトレーニング理論についてご紹介します。
2.ダニエルズ式トレーニング理論とは
ここでご紹介するダニエルズ式トレーニング理論は、書籍の「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」に記載されている、ジャック・ダニエルズ博士が考案したランニングのトレーニング理論のことを言います。
ダニエルズ式トレーニング理論の特徴
① VDOTによるトレーニング指標
ダニエルズ理論の中心となるのが「VDOT」という指標。
現在の走力を数値化し、適切なトレーニングペースを設定できる。
これにより、過度なオーバーペースを防ぎ、効率的なトレーニングが可能になる。
VDOTは直近のレースタイムを表に当てはめて確認できます。
私の直近のタイムを当てはめると
フルマラソン 3:25:19
→VDOT 45~46
ハーフマラソン 1:34:40
→VDOT 47~48
という感じです。
表の中から、各距離の自分のタイムを当てはめ、一番高いVDOTを採用することになります。
レースに出たことがない人はなるべくフラットなコースで、10㎞か5㎞のタイムトライアルを行ってもいいと思います。
そのタイムを参考に自分のVDOTを確認してください。
次はこれ指標を使って自分の走力に合った練習を計画します。
②VDOTに合わせてトレーニング強度を決める
自分のVDOTがわかったら、表に記載してあるVDOTの欄を確認してください。
VDOTのレベルに合わせたトレーニング強度がわかります。
それぞれのペースに明確な目的があり、適切に取り入れることで効率的に走力を向上させることができます。以下、それぞれのペースについて詳しく説明します。
Eペース(イージーランニング)
Eランニングの効果は、ケガに対する耐性をつくる、心筋を強化する、血液の酸素運搬能を改善する、筋繊維をランニングに有利な性質に導く、ということである
目的
持久力向上
体への負担を抑えながら走行距離を稼ぐ
疲労回復
特徴
会話ができる余裕のあるペース(最大心拍数の60〜75%程度)
週のトレーニングの大半を占める(全体の約80%)
筋肉や心肺機能を強化し、長時間動き続ける能力(持久力)を向上させる
速いペースのトレーニング(T・I・Rペース)の疲労回復にも使う
トレーニング例
Eペース走30〜90分
Eペースのロング走(20〜30km)
Mペース(マラソンペースランニング)
Mペースランニングをする目的は、実際のレースペースに慣れること、そしてそのペースで給水をとる練習をすることである。したがってMランニングの主な効果は、メンタル的なもの、つまり設定したペースで走る自信を高めるものと言ってもいい。
目的
マラソンに必要な持久力の向上
レースペースへの適応
メンタル的な効果、自信を高める
特徴
フルマラソンを走るときのペース(最大心拍数の75〜85%程度)
Tペース(閾値走)よりは楽だが、Eペースよりも明らかに速いペース
長時間維持することを目的にするため、無理に速く走るのではなく、レース本番のペースに慣れるのが大切
トレーニング例
Mペース20km走
Eペース5㎞→Mペース10㎞→Eペース5㎞
Tペース(閾値走)
血中の乳酸を除去し十分処理できる濃度に抑える能力を高めるために行う。持久力を向上させるために行うと考えればよい。つまり、ある程度の時間、少しだけ速めのペースで持ちこたえることを身体に覚えさせる、あるいは一定ペースを維持できる時間をのばす、ということだ。
目的
スピード持久力(長時間速く走る能力)の向上
乳酸処理能力の向上(乳酸閾値の向上)
特徴
「ややキツいが、一定時間なら維持できるペース」(最大心拍数の80〜90%程度)
20〜60分程度の持続走が可能なペース(一般的には1時間全力で走れるペース)
乳酸が急激に増える手前のペースで走ることで、より速いペースで長時間走れる能力を向上させる
適正なペースを保つことが重要、遅すぎても、早すぎてもダメ
トレーニング例
テンポ走 Tペース20分間走
クルーズインターバル(Tペース5分~6分、休息1分×4~6)
Iペース(インターバルトレーニング)
私の考えでは、VO2maxを最大限に向上させることが、Iトレーニング、特に、本章で説明するIトレーニングの最大のメリットである。
目的
有酸素能力(VO2max)の向上
特徴
5kmレースペース相当の強度(最大心拍数の90%程度)
3〜5分の速いペースで走り、同じ時間だけ休息を入れる(レストはジョグ)
速いペースに心肺を慣れさせることで、レースペースが楽に感じられるようになる
トレーニング例
Iペース1,000m→ジョグ500m×5
Iペース3分→ジョグ3分 ×5
Rペース(レペティショントレーニング)
R(レペティション)トレーニングの主な目的は、無酸素性作業能、スピード、ランニングの経済性を高めることにある…特に大事なのは十分に身体を回復させ、正しい走動作で速く走ることだ。スピードをあげたときにもがき苦しむのは避けたい。フォームが崩れてしまうからだ。
目的
スピード強化・ピッチの向上
フォーム改善(ランニングエコノミーの向上)
特徴
正しいフォームで速く走ることが重要、そのためにレストを長めに取る
走った時間の2~3倍の時間を休息する
無酸素運動に近く、心肺というよりは筋肉への負荷が大きい
トレーニング例
Rペース200m→休息1分×8
Rペース400m→休息2分×6
3.ダニエルズ式トレーニングまとめ
トレーニングは「目的」を意識して組み合わせることが重要
Eペース:距離を稼ぎ持久力をつける
Mペース:マラソンを想定し、本番のペースを体に覚えさせる
Tペース:スピード持久力を向上させる
Iペース:心肺機能を強化し、速いペースでの余裕度を上げる
Rペース:スピードを強化し、フォームを改善する
「速いペース=良いトレーニング」ではない!
速すぎるペースで走るとトレーニング効果が下がり、ケガのリスクが増す
各ペースの目的を理解し、適切な割合で組み合わせることが重要
私の普段行っているマラソントレーニングは
練習の8割くらいはEペースで行う
週に1~2回、ポイント練習としてT、I、Rペースを行う
レースが近くなったらMペースを練習に取り入れる
このような感じで、練習を組んでいます。
なるべく、設定したペースで練習しようと心がけていますが、レースにエントリーした直後でテンションが高いときや、走っていて調子のいい日などは、ついついオーバーペースになったり、レストの時間を短くしてしまったりすることがあります。
大切なのは適切な負荷を継続的に体にかけ続けること。
短期間だけ辛い練習をしても効果はあまりありません。
練習は、再現性、継続性が大切です。
そのためには、現在の自分のレベルを確認し、それに合った練習計画を作ることが重要になります。
今回、この記事を書いていて、私も再認識することがいくつかありました。
今後の練習に役立てていこうと思います。
是非、皆さんもダニエルズ式トレーニング理論を参考にして、トレーニング計画を立ててみてください。
この記事が皆さんのランニングライフのお役に立てれば幸いです。



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