野球部の走り込みは必要?ケガ予防とパフォーマンス向上の科学的な考え方
- 院長 大澤慎吾

- 2025年12月4日
- 読了時間: 5分
野球部が走り込みをする理由
~ケガをしない体づくりのためには~

「試合ではそんなに走らないのに、なんで野球部はあんなに走り込むんだろう?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
確かに、野球はサッカーのように1試合10km以上走るわけではなく、塁間をダッシュする場面や守備位置の移動くらい。それでも多くの高校野球部では、冬場の“走り込み”が伝統のように行われてきました。
私は治療家として、そしてマラソンランナーとして日々体と向き合う中で、走り込みの意味を再考する必要を感じています。
⚠️ 走り込みは悪ではありません。でも、「目的のない走り込み」「やりすぎる走り込み」は、体づくりではなく“体こわし”になります。
このブログでは、ケガをしない体づくりのために「走り込みをどう考えるべきか」を、私の経験とデータをもとにお伝えします。
練習は“なぜやるか”がすべて。目的のない練習は危険です
これは走り込みに限らず、すべての練習に共通します。
練習は「量」より「質」より、まず「目的」。
何のために今それをやるのか?
その練習は自分の体に合っているか?
今のタイミングでやる意味があるのか?
この問いにYESと答えられないなら、それはただの作業。場合によっては体を壊すだけです。
目的を持たずに練習を続けてしまうと――
✅ 疲労が抜けない
✅ フォームが崩れる
✅ 同じ部分に負担が集中し、ケガにつながる
これが、いわゆる〝オーバートレーニング〟の状態です。
どれだけ才能があっても、努力家でも、オーバートレーニングに陥った瞬間、体は壊れます。
「頑張ってるのに結果が出ない」
「最近、なんか動きが重い…」
「練習してるのにケガばかり」
それ、ただの練習不足じゃなくて、“目的を見失った練習のしすぎ”かもしれません。
走り込みの意味は「高強度の練習を支える体を作ること」
野球の練習は、意外とハードです。
投球・打撃・フィールディングなど“高強度”の動きが多い
反復が多く、練習時間も長い
夏場は暑さ・連戦との闘い
つまり、プレーの質を支える体力がなければ、練習の意味を十分に引き出せません。
だからこそ、走り込みは「プレーのための基礎工事」として行われてきました。
心肺機能を高め、長時間練習でもバテにくい
筋肉や腱の耐久性が上がり、ケガのリスクを減らす
疲労回復力が高まり、翌日の練習にスムーズにつながる
こうした〝体力の地盤づくりとしての走り込み〟には確かな意義があります。
でも「走り過ぎ」は、むしろ故障のリスクに
成長期の中高生は、ただでさえ体が大きく変化する時期。この時期に、目的や量の調整なく走り込みを課すと――
シンスプリント(スネの痛み)
オスグッド病(膝下の炎症)
疲労骨折(スネ・足・腰)
といった障害が非常に起こりやすくなります。
たとえば、
中学生で週50kmを超える走り込みは、疲労骨折のリスクが急増(日本臨床スポーツ医学会)
オスグッド病は12〜15歳での発症率が約10%(運動している子どもは非運動児の2倍)
高校1年生での疲労骨折が男女とも最多(高校入学後の練習急増による)
これらのデータからも分かるように、「走れば強くなる」ではなく、「適切に走らなければ壊れる」のです。
私自身の経験:月間200km走ったら体が変わった
私はフルマラソンにも挑戦していますが、走行距離と体の耐久性には明らかな関係を感じています。
以前は月間100〜150kmほどでレースに出ていました。その頃は、レース後は足がパンパン。筋肉痛も強く、回復に1週間はかかっていました。
それが、今年の金沢マラソン。7〜11月にかけて月間180〜230kmをコンスタントに走り込んだ結果、レース後の体が驚くほど元気だったんです。
正直、「もっと追い込めたんじゃないか?」とすら思うほど。でもそれは、ようやくフルマラソンに耐えられる“走れる体”をつくれた証拠だったと思います。
野球も同じです。全力投球やフルスイングを毎日できる体を作るには、それを支える“容量の大きい体”が必要。走り込みには、その土台を作る役割があります。
治療家として見る「ケガをしやすい体の使い方」
実際、ケガや障害が多い選手には“ある共通点”があります。
それは、体幹部や股関節がうまく使えず、腕や膝下の末端で頑張りすぎていること。
専門的には「マッスルインバランス(筋の不均衡)」の状態です。
例えば、
体幹が不安定で、フォームがブレる
股関節が詰まり、膝や足首に負担が集中
一部分だけを過剰に使う動き方が定着している
こうした体で走り込むと、たとえ“量”がそこまで多くなくてもケガに繋がります。
だからこそ大切なのは、“バランスよく走れるフォーム”を身につけたうえで、目的に応じて走ることなんです。
今の指導現場は「量より目的」に変わってきている
最近の強豪校の多くは、走り込みを「根性」ではなく「戦略」として取り入れています。
横浜高校:冬は筋トレ重視、走り込みは必要最低限
明石商業:走力より“増量”を優先し、筋トレ+短距離ダッシュ中心
筑波大学:走り方と投球動作の連動性に注目し、技術の一部として走りを考える
どのチームも共通しているのは、「何のために走るのか」を選手にも伝えていること。
ただ苦しいだけの練習は、もう時代遅れです。目的を持った走りが、未来の体を支えてくれます。
結論:目的のある練習こそが、ケガを防ぎ強さを生む
走り込みに限らず、すべての練習は
目的のあるものだけが、成長につながります。
オーバートレーニングは「頑張った証」ではなく、「設計ミス」です。
だからこそ、自分の体としっかり向き合って、「何が足りていないのか」「今の体に合っているのか」を考えながら練習を組み立てていく。
それが、ケガをしない体、強くなれる体をつくる一番の近道です。
🔹もし「自分の場合はどうすればいいか?」
「練習量は足りてるのに調子が上がらない」「フォームが不安」などあれば、一人ひとりの体の状態に合わせてアドバイスも可能です。気になる方はお気軽にご相談ください。
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