むつみ接骨院の骨盤矯正①
- 院長 大澤慎吾
- 3月6日
- 読了時間: 8分
更新日:3月21日
下位交差性症候群とは?

(1)むつみ接骨院の骨盤矯正
「骨盤矯正とは?」とグーグルで調べてみたら、次のような検索結果が最初に表示されました。
骨盤矯正とは、日頃のくせや運動時の偏った身体の使い方などによって傾いてしまった骨盤を正しい位置に戻す施術となります。 骨盤まわりの筋肉をほぐすことでバランスを整えたり、関節自体に適度な圧力を加えて位置を矯正したりと施術者によってアプローチ方法はさまざまです。
このような意味でしたら、当院では骨盤矯正を行っています。
しかし、猫背矯正と同じく、当院には骨盤矯正という施術メニューはありません。
①骨盤矯正の目的
骨盤矯正に通われる方の目的はなんでしょうか?
それは骨盤矯正でないと手に入れられないものでしょうか?
大切なことは〝手段(方法)〟と〝目的(目標)〟を混同しないことです。
骨盤矯正を受けられる方の目的は骨盤を矯正することではないはずです。
本来の〝目的〟は
✅腰痛などの体の痛みを治したい
✅ダイエットやプロポーションを整えたい
✅冷えやむくみを治したい
✅姿勢を改善させて体のバランスを整えたい
このようなことではないでしょうか?
このような目的を達成するために骨盤矯正を受けるのであって
〝骨盤の矯正を目的として骨盤矯正を受ける〟というのは
本来の目的を見失っているのではないでしょうか?
骨盤矯正はあくまでも〝手段〟であって〝目的〟ではないはずです。
そのため当院では骨盤の矯正を目的とした施術は行っておりません。
骨盤矯正は目的を達成するための手段の一つです。骨盤矯正をしなくても腰痛を治したり、ダイエットに成功する方法はたくさんあるはずです。
「骨盤が歪んでいるから腰が治らない」と思いこむことにより視野が狭くなり、選択肢を狭めてしまうのはもったいないことです。
※誤解しないで下さい
ここまで読むと骨盤矯正を否定しているように思われるかもしれませんが、手段としての骨盤矯正を否定しているわけではありません。多くの接骨院や整体院、美容サロンで骨盤矯正が行われ、施術を受けて症状を改善している人は大勢います。
今、骨盤矯正に通われている方で効果を実感し、満足をしている方は通い続けてください。しかし、そうでない方は手段の見直しをしたほうが良いと思います。
②骨盤が歪んでいる?ズレている?

骨盤の歪みを気にされる方は多いですが、実際には見たり触ったりするだけで正確に判断することは非常に難しいです。そもそも、骨盤はもともと左右対称ではなく、CTを用いた研究(Kristin H, et al., 2020)でも、150例のご遺体すべてにおいて男女ともに骨盤の非対称性が確認されています。そのため、「骨盤がズレている」と断言することは科学的に難しいのが現実です。
実際のところ、多くの場合は「骨盤自体がズレている」のではなく、「骨盤周囲の関節や筋肉のバランスが崩れている」ことが問題です。特に関節の可動域が低下し、筋肉の緊張が偏ることで、あたかも骨盤がズレているように感じられることが多いのです。
当院では、骨盤が「歪んでいる」「ズレている」といった不確実な表現にとらわれるのではなく、「痛みの有無」や「力が入りやすいか」などの機能面を重視して施術を行っています。機能的でスムーズな動作を取り戻すことが、結果的に身体のバランスを整えることにつながるのです。
③筋肉のアンバランス
※これ以降の内容は「筋肉のバランス」「交差性症候群」「腹圧を高める」など聞きなれない言葉が出てきます。よくわからないという方は下記のブログをお読みになってください。
「むつみ接骨院の猫背矯正」の記事でも取り上げましたが、当院では筋肉のバランスを整えることを重視して施術をしています。
普段の体の使い方や姿勢などによって、使われている筋肉と使われていない筋肉の差が生まれ、それにより身体の筋肉のバランスが崩れてしまい、それが不良姿勢や様々な症状の原因になるということを以前の記事で言いました。
過剰に緊張して短縮する筋肉と弱くなって機能低下する筋肉が発生して身体の筋肉のバランスを崩してしまうということが骨盤の周囲でも起こります。それを専門的な言葉で表すと
「下位交差性症候群」
(かいこうさせいしょうこうぐん)
といいます。これを改善することが本質的な骨盤矯正になると考えます。
(2)下位交差性症候群とは?
下位交差性症候群を簡単に説明すると「骨盤周囲の筋肉のバランスが崩れて、何かしらの症状が体に出ている状態」です。猫背矯正の時に説明した「上位交差性症候群」の下半身バージョンです。

上の図は下位交差性症候群の筋肉のバランスを表しています。
赤い部分が緊張して硬くなっている部位
腰から背中:広背筋、脊柱起立筋群(腰を反らせる筋肉)
股関節の前から太ももの前:腸腰筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋(股関節を曲げる筋肉)
青い部分が弱くなって機能低下している部位
腹部:腹横筋、横隔膜(腹圧を高める筋肉)
お尻からもも裏:大殿筋、中殿筋、ハムストリングス(股関節を伸ばす筋肉)
このように交差性症候群では緊張している部位と弱くなっている部位が交差する位置関係になります。
(3)下位交差性症候群の姿勢の特徴と症状
①姿勢と特徴
下位交差性症候群の姿勢は2つのタイプに分けられます。
タイプA「反り腰」

姿勢の特徴
骨盤の前傾
腰椎の過剰な前弯(反り腰)
下腹部の突出(下腹が出る)
臀部の突出(お尻が後ろに出る)
股関節の屈曲位
なりやすい人の特徴
スポーツや筋トレをしている
肉体労働や立ち仕事が多い
筋肉の緊張が強く、柔軟性が低下している
✅筋力はあるけれど、特定の筋肉が過緊張することで姿勢が崩れてしまう。
タイプB「フラットバック」

姿勢の特徴
骨盤の後傾
腰椎の前弯減少(平坦な腰)
胸椎の後弯増強(猫背)
頭部前方位(ストレートネック)
股関節の伸展位
なりやすい人の特徴
運動不足で筋力低下している
デスクワークなど長時間座ることが多い
姿勢が崩れやすく、腰や骨盤を支える筋肉が弱い
✅筋力不足が原因で姿勢が崩れてしまう。高齢者に多い。
このように下位交差性症候群の場合
骨盤が前傾すると反り腰タイプ
骨盤が後傾するとフラットバックタイプ
となります。
骨盤の傾きと姿勢の連鎖
骨盤前傾(反り腰)
→ 腰椎前弯増大
→ 胸椎後弯増大(猫背)
→ 頭部前方位(ストレートネック)
骨盤後傾(フラットバック)
→ 腰椎前弯減少(フラットバック)
→ 胸椎後弯増大(猫背)
→ 頭部前方位(ストレートネック)
どちらのタイプでも、胸椎後弯と頭部前方位は共通してみられ、猫背やストレートネックにつながります。
これは、以前ご説明した上位交差性症候群と下位交差性症候群が連動して起こるためです。
そのため、骨盤矯正では骨盤だけに注目するのではなく全身の姿勢や動作のバランスを整えることが大切です。腰や骨盤周りの筋肉や関節だけでなく、肩や首周りまで総合的にアプローチすることが必要になります。
②下位交差性症候群の主な症状
上位交差性症候群と下位交差性症候群が連動するということは症状も連動しますが、今回は下位交差性症候群が引き起こす症状をご説明します。
下位交差性症候群では、骨盤周囲の筋のアンバランスに伴い腹圧の低下や体幹の支持性の低下が起こり、次のような症状につながります。
💥腰痛
腹圧が低下すると、体幹部が不安定になることで、腰椎に圧力がかかり、腰部周囲の筋肉が緊張して硬くなることで痛みの原因になります。
腰椎椎間板ヘルニアや腰椎すべり症などの腰部疾患のリスクが高まり、神経を障害されると下肢の痛みシビレ、筋力低下が現れます。

💥骨盤(仙腸関節)の痛み
骨盤周囲の筋力バランスが崩れることで、骨盤の安定性が低下し、骨盤が過剰に動きすぎることで痛みが発生します。特に長時間の立位や座位で痛みが出ることが多く、ぎっくり腰のような急性の腰痛として現れることもあります。
仙腸関節や周囲の筋肉(梨状筋など)が圧迫や炎症を起こすことで、お尻から太ももの裏側にかけての放散痛やしびれが現れることがあります。

💥股関節の痛み
骨盤の傾きや不安定性により、股関節に過剰な負担がかかることで痛みが発生し、変形性股関節症のリスクが高くなります。股関節周囲の筋肉の緊張により関節の動きが悪くなったり、痛みだけでなく筋肉が神経や血管を圧迫することで脚のシビレ痛みを引き起こします。

💥膝の痛み
体幹の安定性低下や股関節の動きが悪くなることにより膝関節への負担がかかり、変形性膝関節症リスクが高まります。下肢のアライメントが悪化し、膝関節がグラついたり、動きが悪くなり膝周囲の痛みの原因になります。特にスポーツをしている人はケガや腸脛靭帯炎(ランナー膝)などのスポーツ障害の原因になります。

下位交差性症候群は、骨盤周囲の筋肉のアンバランスが原因で、腰痛や股関節痛だけでなく、全身の姿勢や動きに影響を及ぼします。さらに、猫背やストレートネックなどの上半身の不調とも連動しているため、骨盤だけでなく全身のバランスを整えることが重要です。
筋肉のアンバランスは日常生活のクセや習慣の積み重ねによって作られるため、矯正だけでは一時的な改善にとどまります。
本質的に改善するためには、施術による調整に加えて、トレーニングやセルフケアが欠かせません。
長くなりましたので改善するための方法は「むつみ接骨院の骨盤矯正②」で解説しますので、是非お読みになってください。
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